1972年(28歳)、結婚して2年目のことです。
職場では、Aカントリークラブのオープン前の第二次
会員の募集の話しで盛り上がっていました。

45万円の預託金を支払う事で会員になれると言うので、
既に十数名の加入が決まっていました。

スポーツの好きな私は、是非加入したいと妻に相談したところ、
少ない預金の殆んどをこのために当ててくれました。
この事は、今でも妻に感謝しています。

高原の爽やかな風を全身に浴びて、
緑の芝生を踏みしめて歩くのはとても気持ちのよいものです。
また、職場やクラブのゴルフコンペを通じて体力や人間関係の
向上に役に立った事は言うまでもありません。

特に、クラブのコンペでは2回入賞し、
Bクラス最高のオヒィシャルハンディキャップ17まで登りつめました。
しかし、Aクラス(ハンディ16以下)の壁は厚く、
3年挑戦しても乗り越えることができませんでした。

ゴルフの奥深さを知り、心、技、体を別な角度から鍛え
ようと方向転換をし登山を始めました。  
その頃、80年代はゴルフブームで私の会員権も
13倍の590万円までに高騰しました。
しかし、売却しようとは思いませんでした。
ゴルフ、水泳は生涯スポーツと決めていたからです。

しかし、体調に異変を感じ、最後のゴルフは2000年
(56歳)夏でした。
それでも、毎年4月には28,000円の年会費の引落しがありました。
そこで、2004年(59歳)の春、妻に話し脱会の手続きをしました。

年会費を止めることは出来たものの、
預託金については脱会希望者が多く年2回(5、11月)の
抽選で20名に返済されると言うのです。
確率は10%程度です。
幸運にも、2004年(60歳)11月の抽選で見事当選し脱会の手続きが行なわれました。

突然訪れた、招かざる客「ALS」は、
シニア世代にゴルフの復活を楽しみにしていた夢を奪ったばかりか、
寝たきりの身体にしてしまいました。
これは、まさに速過ぎた想定外の出来事でした。

誰もが望んでいない「寝たきり」から脱出し、
散歩や旅行などをしたいと言う思いから、
預託金はすべて福祉車両(VOXY)の購入に充てました。

新婚時代に妻が工面してくれた大切な、大切なお金でした。
それ故に再び、自分自身のために使う事に抵抗がありました。
妻には何ひとつお返しが出来ない今は、ただ、ただ 「
感謝」 するばかりです。

これは、自慢話ではありません。
先見の明が無くて、お金儲けができない男の話です。